教材の使い方3『算数トレーニング 数の基礎・計算編』

教材の使い方コラム。第3回目は算数の支援の話として『算数トレーニング 数の基礎・計算編』を中心にお話します。
なお本コラムは、日本LD学会第27回大会での発表内容を踏まえたものになります。

 

■独自の算数教材『算数トレーニング 数の基礎・計算編』

現在弊所には算数に関連した教材が3冊ありますが、『算数トレーニング 数の基礎・計算編』がその中心となります。算数の教材は多く市販されていますが、発達支援の観点を取り入れた本教材は、他の算数教材とは大きく異なった特徴があります。

1:効果的な復習をねらった構成

算数のつまずきが多いお子さんに対しては、前の単元に戻って復習することが多く、その際には市販の教材の学年を下げたものを活用することが多いようです。ただ学年を下げた内容を学習しても、効果的な復習になっているとはいえません。

学習内容が身につきにくいお子さんについては、「次の単元に活かせるもの」「日常生活に活かせるもの」という観点で、復習内容を絞り込むことが大切で、そのほうがお子さんにとっても支援者にとっても助けとなります。

例として、かけ算九九を考えてみましょう。

はじめは暗唱を中心として定着をはかりますが、「わり算」「約数」「約分」「平方根」と学習内容が進むにつれて、覚えた九九をどう活用するのかが求められるようになります。

例えば「16」を見た時に「同じ数をかけ合わせた」と分かるかどうか、これが平方根のスムーズな理解につながります。「4×4」を何度も覚えるのではなく、「16」から「4×4」を連想できるようにすることが、復習としては求められるのです。

なかなかこのような復習方法をしないためにつまずいているお子さんもいますが、狙いを定めた復習をすることによって、クリアできるようになるお子さんも多くいます。そのように構成されたのが本教材なのです。

 

2:「読んでイメージする」「活用する」をスモールステップで学ぶ

新学習指導要領でも示されているように、知識は「活用すること」が求められるようになります。算数においても、知っている知識を使ってどのように解くのか、あるいは解いた結果がなんであるのかを理解して活用することが重要といえます。

例えば、あまりのあるわり算について本書では、「このあまりの意味は何でしょう」という選択問題を取り入れています。特別変わった解き方を教えるのではなく、従来の解法過程を細分化して、真にスモールステップで学べるよう配慮しています。

図式化する過程も細分化し、問題文を読んで「図を選ぶ問題」「図と式を選ぶ問題」「式だけを選ぶ問題」など、一つ一つ着実にかためながら、よりイメージがわきやすいように問題を構成。答えの単位を問う問題(●個なのか○人なのか、など)も取り入れ、計算はできてもその意味が理解できないお子さんに対して、さまざまな角度から「活用力」を身につけられるようになっています。

 

■算数教材は「読む力」シリーズも活用できる

また、文章題に特化したワークとして、前回本コラムでご紹介した『読む力トレーニング』『読む力トレーニング 基本編』も、算数関連の教材としてあげられます。これは「計算のない文章題」をコンセプトにした教材で、数を使わない文章題を解くことで、論理的思考力を育む教材となっています。

さまざまな先行研究から、子どもたちは式を立てる際に、数の大小関係に頼っていることが分かっています。そのため、以下のように文章題の数字を記号に置き換えて立式をさせると、正答率が下がってしまうのです。実際に支援をしていると「文章題は苦手だが計算だけはできる」というお子さんについては、その傾向がより強くみられます。

(例)「あめが●こあります。■こ食べると、あめはいくつになりますか」
         「●-■」の式を選ばせる、など。

『算数トレーニング』 に合わせ、この「読む力」シリーズをお使いいただくことで、さらに解法のためのスキル向上がはかられ、より効果的な学びにつながるといえます。

 

Eラボ・スペースでは、上記内容についての事例研究として、2018年の日本LD学会にて発表を行ない、この「いーらぼ式」のノウハウを広く先生方と共有しました。
さらに本コラムをお読みいただき、多くの先生方や支援者のみなさんを通して、一人ひとりのお子さんの成長につながってくれることを願っています。

 

2019/01/15掲載

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